ステーブルコインとは(別名ペッグ通貨)
ステーブルコインとは価格変動のない仮想通貨のことです。
ステーブルコインをドルや円やユーロなどの法定通貨と交換し、それらの通貨と為替レートと固定しておくことで価格を安定させる仮想通貨です。(※法定通貨以外の担保手段があります。)
ステーブル(Stable)とは日本語で「安定した」という意味があります。またステーブルコインは別名「ペッグ通貨」とも呼ばれています。
ペッグは日本語で「くい(をうつ)」「釘(をうつ)」の意味がありますが、テントを立てる時に紐を地面に固定する大きいな“くい”、あれをペグとかペッグといったります。つまり固定するという意味です。
そもそもなぜ安定した仮想通貨が生れたのか?なぜ必要なのか?それは経緯を学ぶと分かります。
誕生の経緯
ビットコインを筆頭にこれまでの仮想通貨は価格の乱高下が激しく、明日価格が半分になっているかもしれないというかなり不安定な状態です。(これをボラティリティが高い、といいます。)
今、世界はキャッシュレス社会に向けて大きく動いています。そんな中で日々価格が乱高下する通貨は決済や送金、貯金、取引などには向いていませんよね。
そこで誕生したのが価格を安定させた仮想通貨、ステーブルコイン(ペッグ通貨)です。
先ほども書いたように、世界でも信用力の高い法定通貨と交換することで価格を安定さてるわけです。
種類とそれぞれの特徴
ステーブルコインは3種類あります。
- 法定通貨担保型
- 仮想通貨担保型
- 無担保型
法定通貨担保型
冒頭で説明したのがこの法定通貨担保型です。法定通貨(円やドルといった国の通貨)なので、みなさんも理解がし易いと思います。
法定通貨担保型の特徴は価格が安定し、なおかついつでも法定通貨と交換できることですが、法定通貨と連動しているためその通貨の価値が下がればそのステーブルコインの価値も下がります。
要は、交換した法定通貨の国の経済状況・政治情勢などに影響されるということです。しかしこれは仮想通貨ではなくても現金でも同じことが言えます。
担保にできるのは法定通貨以外に、金や原油を担保にしている仮想通貨も法定通貨担保型に含まれます。
主な仮想通貨担保型ステーブルコイン
●米ドルを担保にしているステーブルコイン
- Tether (テザー/USDT)
- TrueUSD(トゥルーユーエスディー/TUSD)
- Gemini dollar(ジェミニ・ダラー/GUSD)
- Paxos Standard(パクソススタンダード/PAX)
- USD Coin(ユーエスディー・コイン/USDC)
- Stronghold USD(ストロング・ユーエスディー)
既存のステーブルコインのような仕組みではありませんが、システムによってドルが100%担保されされ、しかも価格が過去最高値の50%以下にならないEXコインというものもあります。
●日本円を担保にしているステーブルコイン
- LCNEM(エルシーネム)
- GMO Japanese YEN(ジーエムオー・ジャパニーズ・エン)
- Grand Shores West(グランドショアーズウエスト)
●ユーロを担保にしているステーブルコイン
- Stasis EURS(スタシスユーロ/EURS)
●中国の人民元を担保にしているステーブルコイン
- BitCNY(ビットシーエヌワイ/BITCNY)
●金を担保にしているステーブルコイン
- DigixDAO(ディジックスダオ/DGX)
●原油を担保にしているステーブルコイン
- Petro(ペトロ/PTR)
仮想通貨担保型
仮想通貨担保型は名前の通り仮想通貨を担保にしたステーブルコインです。法定通貨担保型と同じく、担保としている仮想通貨とはいつでも交換可能です。
ただし、担保とされている仮想通貨自体が値動きが激しいのでこのタイプのステーブルコインも不安定です。
- MakerDAO(メイカー・ダオ/DAI)
- Havven(ヘブン/HAV)
無担保型
無担保型も文字通り担保がないステーブルコインです。市場への通貨供給量を調整することで価格を安定させるのが無担保型の特徴です。
Basisという無担保型のステーブルコインがありましたが、2018年12月に廃止されています。
ステーブルコインのメリット
ステーブルコインのメリットはいかの3つです。
- 価格の安定
- 乱高下する仮想通貨の避難先
- 国際送金が速くて安い
価格の安定
価格の安定はステーブルコインの最大のメリットです。価格が安定することにより、安心して決済や送金に使うことができます。
乱高下する仮想通貨の避難先
ステーブルコイン以外の仮想通貨は基本的に価格が乱高下しています。価格が大暴落する前に一旦ステーブルコインと交換しておくことで資産を守ります。
仮想通貨だけでなく、政治や経済が不安定な国の法定通貨も不安定なので、そういった国々の通貨の避難先としてもステーブルコインは有効です。
国際送金が速くて安い
従来の銀行窓口やネットバンキングを利用した国際送金は送金日数が3~7日、送金コストは数千円~1万円程度かかっていました。
ステーブルコイン同士で送金すれば、国際送金も国内送金も速くて安いというメリットがあります。
価格が乱高下する仮想通貨とは違い、ステーブルコインなら下落による損失リスクが低減できます。
ステーブルコインの課題
ステーブルコインの課題は以下のものが挙げられます。
- 発行者の信頼性
- マネーロンダリング(資金洗浄)
発行者の信頼性
ステーブルコインは価格の安定性が大前提となっている仮想通貨です。しかしテザー問題やIMFの提言にもみられる通り、発行者が担保しているはずの法定通貨を自社の別の事業に流用したりする問題が起きています。
ステーブルコインはいつでも法定通貨と交換できることで信頼が得られるわけですが、それは発行したコインと同じだけの法定通貨を常に保有していないとできません。
テザーはとうとう74%しか保有していないことを認めてしまいました。
これだと約3割は法定通貨と交換できない可能性が出てきます。これにより価格も不安定になりかねません。
この問題を重くみたIMFは、ステーブルコイン発行者に法定通貨の100%保有と、そのお金を第三者機関に管理させることを法律で義務付けるよう提言しています。
マネーロンダリング(資金洗浄)
現在の国際送金は複雑で手間もかかるためマネーロンダリング(資金洗浄)の抑止になっています。
しかしステーブルコインが普及すると国際送金が簡単になり、容易くマネーロンダリングができるとの指摘が世界中でなされています。
将来性
ステーブルコインは価格が安定しているという最大のメリットがありますが、現状ではその安定を支えているであろうはずの法定通貨が流用される、あるいは流用されかねないという問題が指摘されています。
IMFが提言したように、これをクリアしない限りは心の安定した仮想通貨とはならないでしょう。
またマネーロンダリングの課題も大きいです。Facebookのリブラは特にマネーロンダリングが指摘されていました。(Facebookは誰でも簡単に偽のアカウントが作成できるため、架空の人物になりすまし簡単にマネーロンダリングができる。)
ただし大手企業や銀行がステーブルコインの発行にも乗り出しているので、その信用力を裏付けとしてステーブルコインの未来を切り開こうと試みています。
ステーブルコインは法定通貨の100%保有と第三者に管理させることが義務化されれ、さらに運営が大企業となれば世界中で普及するかもしれません。
ただ、法整備も国によってスピード感が違うし、企業間でも牽制・競争しあっているので、まだまだ道のりは遠そうです。