EXコインライフを楽しんでいる人もそうでない人もこんばんは。徹学者のakiraです。
前回はEXコインの基の技術となっているFeliCaについて学びました。
FeliCaは世界標準規格なのにも関わらず、ほぼ日本のみでしか使われていないというガラパゴスの象徴です。
しかし世界でもFeliCaはその技術の高さから、一目置かれる存在ではあるようです。
ではなぜガラパゴス化してしまったのか?
今回は少し暗い話になるかもしれませんが、EXコインのプロジェクトをストーリーとして楽しむ?(楽しくないけど、何か湧き上がるものがある)ことができます。
ではまいります。
最大の理由は欧米の政治力に負けたから
現在、世界で最も使われているNFCはTypeAやTypeBですが、性能的にはFeliCaの方が勝っていました。
しかし世界標準規格ISOとしてはオランダのNXPセミコンダクターズ社 (旧フィリップスセミコンダクターズ社)がTypeA(マイフェア)に、アメリカのモトローラがTypeBに認められてしまいました。
性能的に優れているのになぜFeliCaだけは認められなかったのか?
この一連の騒動の核心は、これら3つの非接触通信技術が性能で審議されたのではなく、FeliCaを世界標準規格にすることへの欧米の強い反対があったからという意見が濃厚のようです。
現場にいた人や取材した人たちの声がそれを物語っています。
例えば、実際にFeliCaの海外展開を現場で行っていた元ソニーで現在は建築インテリアデザイナー のクローデン葉子は次のように語っています。
結局、欧米市場に入れなかったのは『ルール作り上手なフランス – 2』で書いたように世界標準規格ISOを取れなかったこと(ヨーロッパ勢に政治力で負けた)などいろいろ要因はありますが、・・・
https://blog.ladolcevita.jp/2010/12/07/felica3_-_1/
続いて、FeliCaについて取材しとても詳しく書かれている「FeliCaの真実」の著者でノンフィクション作家の立石泰則さんも同じようなことを書いています。(マイフェアとはTypeAのこと)
理由はいろいろ取り沙汰されているが、要するにマイフェアが普及している欧州勢からの強い反対があったからだ。性能としてはFeliCaのほうが優れていたが、マイフェアでビジネスしている欧州ではFeliCaと同等の非接触ICカードを開発する力がなく、作れないものは標準化できないという雰囲気が会議を支配したためだった。
https://www.mag2.com/p/news/225014/3
要は技術的に優れていても、政治で覆されるということですね。
一消費者としては市場には良い物が残って劣るものは淘汰されるのが自然のことなのかなと思いますが、現場では政治的な泥臭いこもと乗り越えていかないと市場は取れないということを痛感させられます。
そういった意味では、EXコインの非の打ち所がない優れた技術や仕組みも政治的に覆されないか(いちゃもんつけられてリブラみたいにならないか)素人ながらに心配です。
ただ、他に理由がなかったわけではありません。
0.1秒の複雑な処理能力はオーバースペックだった
FeliCaは0.1秒という超高速で情報の読み書きができ、しかもセキュリティが高いのに電池やバッテリーがいらないという画期的な発明でした。
当時、欧米ではFeliCaのような高性能な非接触型ICカード作る技術がなかったわけですが、そもそも開発するニーズ自体がありませんでした。
というのも日本の首都圏のように複雑で色々な鉄道会社が入り乱れている国がなかったため、FeliCaのような高性能な非接触型ICカードを開発する必要がなかったわけです。
実際のニューヨークの地下鉄の改札を見て下さい。バーを自力でガッタンガッタン回さないといけません。
日本のように「ピッ」とかざしてタッチアンドゴーでは通れません。
クローデン葉子さんいわく、ヨーロッパでも同様でさらに改札のない駅も多かったそうです。
そんな駅に0.1秒の超高速情報処理技術はオーバースペックだったわけです。
実は発端は違いますが、FeliCaはJR東日本のために開発が進められてたという経緯があります。
首都圏の鉄道利用者は世界でも異常なほど多いだけでなく非常に複雑です。
FeliCaはそんな大量の利用者の複雑な乗り換えや割引情報をたった0.1秒以内という超高速で計算しなくていけないという必要性があったんです。
動画のニューヨークの地下鉄ではどう考えてもタッチアンドゴーはできないし、そもそも日本のように複雑ではなく時間ぴったりに電車が来るわけでもないので混雑はしても日本のように0.1秒も惜しむほど急ぐ必要はなかったわけです。
これはオーバースペックと言われても仕方はないでしょう。
欧米はFeliCaうんぬんよりも丸投げしたかった
クローデン葉子さんはこうも言っています。
競合に対する技術優位をアピールしていたFeliCaですが(私自身、数限りないプレゼンをしたけど)、顧客候補の交通事業者はほとんど理解してなかったんじゃないかなー?
https://blog.ladolcevita.jp/2010/12/08/felica3_-_2/
ーーー省略 ーーー
逆に彼ら(顧客候補)が求めていたものは、システム提供だけではなく運営まで丸投げできる運営ノウハウだったり、問題が起これば24時間365日飛んでくるメンテ体制だったり、ソニーが全く提供していないものでした。
要はそんなオーバースペックなものは求めていないし理解もできない、求めているのは丸投げできるノウハウや体制ということです。
これはまさに日本企業が昔の栄光から今の地位まで落ちた要因でしょう。決してソニーだけではありません。
かつての(今も?)日本企業は性能を追求するあまり、客のニーズを無視して突き進んでしまった結果、お客は過剰な性能に高いお金を払わされるという現象が起きました。
そんなもの比較的裕福な日本でも買えないのに、世界で売れるはずもありません。
例えばエアコンがいい例です。
ソニーに限らず日本企業が陥った過信と顧客無視
ここは少し脱線して我が家の例を紹介します。
沖縄は夏が長いのでエアコンの稼働期間も長いです。なので今年はエアコンのクリーニングを業者に依頼したのですが、エアコンのクリーニングってかなり高いです。
機種によっては高いところで1台2~3万円とか取られます。
僕はなんとか1台3,000~5,000円という安い業者を探すことができたのですが、業者の方になぜこんなに高いのか質問したんです。
すると、今のエアコンにはお掃除機能とか色々性能がついていて分解したり取り付けたりが複雑で、しかも洗う時に水がかからないように最新の注意をしないといけないなどの理由で比較的高性能なエアコンのクリーニングはどの業者も料金が高く設定されているそうです。
しかもこのお掃除機能はほんの気休め程度でしかなく、そんなものに数万円数十万円払うよりは、お掃除機能などの性能がない最低限で省エネなエアコンを買って、定期的に安いクリーニング業者に依頼する方が安上りだし、クリーニングする分電気代も安く抑えられるそうです。
しかもエアコンから出る風は清潔なので気持ちもいい。あのカビ臭いニオイは高性能なお掃除機能でも取れないそうです。
実際の我が家のうん十万円するお掃除機能付きエアコンの汚れ具合がこれです。
1年前に専用の洗浄剤を買って自分たちでクリーニングしましたが、お掃除機能を使っても結局1年でこれだけの汚れが残ります。
だったら数十万かけてお掃除機能付きのエアコン買うよりも、最低限の性能と省エネの機種を選んで定期的に安い業者にクリーニングを依頼した方が安上りだし、清潔なので気持ちもいいです。
1台3,000円なら10年毎年クリーニングしても30,000円で済みます。
このようにお客の視点でのモノ造りは非常に大事だということが分かります。
FeliCaの場合は首都圏のあの世界一混雑して複雑なものを0.1秒という一瞬で処理しないといけないという顧客ニーズがあったわけですが、残念ながら海外にはニーズはなかったわけです。
もちろん政治的に負けたというのが一番大きいとは思いますが、欧米側の言い分も理解できます。
実際にオーバースペックであったわけだし、その分コストも掛かっているわけなので、もしFeliCaが始めから世界標準規格に選ばれたとしても、欧米側の非接触型ICカードを導入する各業者としてはFeliCaを選ばない可能性は高かったでしょう。
FeliCaを初めて導入した香港のオクトパスは技術有りきではなく、ニーズ有りきで誕生したプロジェクトでした。
地下鉄のみではなく路面電車や船やバス、コンビニなどでの電子決済など様々なシーンを1枚のカードで決済したいという目的でオクトパスカードプロジェクトはスタートしています。
そのため膨大な資料(ニーズ)を入札に参加するソニーを含めた各社に渡したそうです。
いかに利用者のニーズ有りきでモノ造りをすれば上手くいくかが分かります。それを日本の企業は学んでいることを切に願うばかりです。
TypeAとTypeBだけがICカードで世界標準規格として先に認められていたが、FeliCaはICカードで認められなかったものの、後に無線通信規格として世界標準規格と認められる。
こちらの1ページ目に経緯が載っています。
香港のオクトパスカードを使っている動画がこちら。非常に便利です。
それでもFeliCaは日本を支えた
FeliCaは当時は世界にニーズがなかったわけですが、日本の鉄道を支えてきましたという素晴らし実績があります。これは経済的にもものすごく大きな貢献です。
そしていよいよ時代がキャッシュレス化に移行しようとする中で、電子決済において素早い情報処理能力、複雑な情報処理能力、高いセキュリティ、省エネ(FeliCa搭載ICカードは電池無しで動く)を世界が必要としています。
それをできるのはTypeAでもなくTypeBでもありません。FeliCaです。
FeliCaは画期的な発明でしたが、残念なことにガラパゴス化してしまいました。
開発者の日下部さんの意図した開かれた便利な使い方とは真反対に、様々な企業がお客を囲い込み不便さを招いてしまいました。
でもやっと時代が追いついてきたので、ぜひこのチャンスを逃さず今度こそFeliCaの技術が世界に羽ばたくことを願います。
FeliCaの技術を基にしたしたデジタル通貨のEXコインについてはこちら